インドネシアでは決算期末後4か月以内(会計監査を実施している場合は+2か月まで延長可能)に年次法人税申告を行うことを義務付けられています。
2022年12月期決算の場合、2023年4月末までに申告を完了させる必要があります。
また年次の法人税計算に先立って、毎月の取引に応じて翌月までに源泉税(PPh)を納税・申告する必要があり、インドネシア特有の税務となっています。
前払源泉税のシステム
源泉税にはいくつか種類があり、よく聞くものとして以下のようなものがあります。
- PPh22:輸入時に支払う源泉税
- PPh23:国内サービス提供時に控除される源泉税
- PPh25:法人税の前払予納税
- PPh26:海外サービス提供時に控除される源泉税
- PPh4-2:ファイナルタックスおよび賃貸等の支払いに係る源泉税
PPh22の事例
輸入を行う商社やメーカーの場合、輸入時に関税(BM)やVATと共にPPh22を支払います。
PPh23の事例
サービス提供を行っている企業の場合、顧客からの請求支払い時にPPh23(2%)が源泉され、残りの98%が支払われることとなります。
PPh25の事例
前年度決算で課税所得が黒字となり、法人税を納付した場合、法人税額を12分割した額を翌期から毎月PPh25として予定納税する義務が生じます。
年次法人税申告について
年度末決算では、税務調整を加えた課税所得から法人税額を算出します(繰越税務欠損金を考慮することも必要ですが、ここでは説明を省略します)。
算出された法人税額が、当期中にすでに納めている前払源泉税の総額より少なかった場合、法人税の過払いとして還付請求を実施することができます。
反面、算出された法人税額が、当期中に既に納めている前払源泉税の総額より多くなった場合、追加納税(PPh29)という形で対応することとなります。
決算が赤字となった場合は法人税額が0となるため、確実に前払源泉税の還付ポジションとなります。
また決算が黒字であったとしても、前期より減益となった場合は、予納税(PPh25)の過払いにより還付ポジションとなることもあります。
還付請求の流れ
還付請求を行うか否かは、税務当局に提出する法人税申告書で決定することとなります。
法人税申告書の中で、法人税額がマイナスと記載すれば、すなわち還付請求対象額があるということで自動的に還付請求を実施するということが税務当局に伝わるようになっています。
一方、還付請求を実施しない(前払源泉税分を放棄する)場合は、法人税計算時に当該前払源泉税を費用化(資産から租税公課費用へ振り替えること)することで対応することになります。
この際、若干の追加納税(PPh29)が発生することもあります。費用化した場合、その費用は損金不算入となるため、繰越税務欠損金に充当することはできません。
税務調査の流れ
還付請求することを記した法人税申告書を提出すると、6か月以内に税務調査開始通知が発行されます。
原則7日間以内に膨大な資料の提出を求められることになりますが、担当官と交渉し1か月程度の猶予を得ることもできます(伸ばしてくれる期間は担当官次第となります)。
その後しばらくは税務署による資料確認の期間があり、法人税申告書の提出から10か月目頃に、急に調査査定書(SPHP)が発行されます。
当初の調査査定書には税務署の一方的な言い分が記載されているので、内容を確認して反論できるものは答弁書を作って反論します。答弁書の作成も原則7日間以内ですが、こちらも交渉次第で猶予をもらえることがあります。
その後税務署での最終検討会議を経て、税務調査決定通知(更生通知書:SKP、もしくは徴税通知書:STP)が発行されます。
還付請求のリスク
これまでの説明通り、インドネシアにおける還付請求には税務調査(Tax Audit)が伴います。
上記のように税務調査の決定が出るまで1年以上を要することや、税制度が整備されていないことにより税務当局の査定・考え方が各税務署あるいは担当官ごとに異なるということもあり、税務調査の結果が不安定であることが特徴的です。
過去のケースでは還付請求を行ったのに逆に重調整を受け追徴課税を支払ったというケースや、明らかにまっとうな説明をしているはずなのに税務担当官が理解できない(あるいは意図的にしない)といったケースもあり、その場合はさらに費用と時間をかけて次のステップである異議申し立て(Tax Objection)へと進んでいくこともあります。
なお、財務大臣規定2018年第39号(No.39/PMK.03/2018)および財務大臣規定2021年第209号(No.209/PMK.03/2021)により、還付請求額が10億ルピア以下の場合は簡易還付請求を実施することができますが、その後の税務調査で過少納税が発覚した場合100%の追徴罰金を受けるため、キャッシュフローに余裕があるようでしたら通常の還付請求手続きを踏むことを推奨しています。