インドネシアの会計監査における変更点

インドネシアにおいて外資企業(PMA)は年次で会計監査を受けることが義務付けられています。

2020年のインドネシア会計基準(PSAK)の大幅改定、およびオムニバス法(雇用創出に関する法律2020年第11号)の施行により、インドネシアでの会計監査も2020年度以降大幅に変更されたことをご存知の方もいらっしゃるかと思われます。

PSAKの大幅改定は、IFRS(国際財務報告基準)に準拠するためのコンバージェンスを図るために2020年1月1日付けで施行されました。どの企業にも共通する改定は次の2つとなります。

PSAK71号(IFRS9号:金融商品)

PSAK71号では、売掛債権の貸倒引当金計上をより厳格に求められるようになりました。

貸倒引当金は期末の売掛金残高に対し、支払期限経過の度合いに応じた割合を掛けて算出します。
一般的には支払期日から91日(3か月以上)を超えても入金のない売掛債権については100%の引当が計上されます。
30日迄、60日迄、90日迄の債権については、当期の回収実績に基づいた割引率が適用されます。

PSAK73号(IFRS16号:リース)

PSAK73号では、リース契約を単純に費用計上するのではなく、使用権資産として固定資産計上して減価償却すること及びリース負債を計上して支払利息を認識すること(オンバランス処理)を求められるようになりました。

リース契約(たとえばオフィス賃料)は、これまでは前払費用計上した後、毎月家賃費用に振り替えられるのが一般的な仕訳でした(オフバランス処理)。

しかしPSAK73号では、リース契約時にB/S上で使用権資産とリース負債を認識し、損P/L上で使用権資産の減価償却及びリース負債の支払利息を計上します。減価償却は、契約年数に応じた定額法が適用されます。
支払利息は、実効金利法を適用して測定されます。契約開始当初は利息額が大きく、契約満了が近づくにつれ利息額が下がっていきます。
最終的に契約満了した際は、契約金額=減価償却費累計額+支払利息総額となります。

PSAK73号では原則として全てのリース契約においてオンバランス処理が必要となりますが、①短期リース(リース期間が1年以内)②少額リース(金額の規定は定まっていません)の場合は例外的にオフバランス処理が認められます。

退職給付の認識

オムニバス法の施行による財務報告への影響としては、退職給付の認識が必要となり、独立年金数理人(Actuary)による計算結果の算出を求められるようになりました。

PSAK24(従業員給付)では、労働法に基づき従来退職給付債務の計算が必要でしたが、これらは社内で計算した簡易的なものの運用が容認されていました。

しかしオムニバス法の施行により、財務省に登録されている年金数理人による計算結果でなければ、監査報告書で監査意見として記載され、限定付適正意見として表明されることとなります。

なお会計監査におけるこれらの影響は監査人によって異なりますので、詳細については監査人にご確認ください。

関連記事